30年以上も前に出版された本ですが、アーネスト・ゴードンという人が書いた「死の谷を過ぎて―クワイ河収容所―」について紹介させていただきます。
著者アーネスト・ゴードンは、プリンストン大学の大学教会の牧師であり、本書は第二次世界大戦の時、10年にわたる捕虜収容所で彼が体験した神の愛の奇跡の記録です。
日本軍は、タイからビルマ(現ミャンマー)を通ってインドへ侵攻するために、鉄道を建設する計画を立てました。インパール作戦と呼ばれたこの作戦は結局失敗しましたが、この作戦の実行のために造られたのがタイとビルマを結ぶ秦緬鉄道でした。日本軍はこの鉄道の工事のために、アジア人労務者20万人を強制徴用し、連合軍捕虜6万人にジュネーブ協定に違反して強制労働を課したのです。
酷暑のジャングルで、アジア人10万人、連合軍1万8千人が死んでいきました。枕木1本に一人が死んだとも言われ、この鉄道は「死の秦緬鉄道」と呼ばれました。
多くの人が病を患い、意気消沈するにつれ、捕虜たちは人間を超えたところに助けを求め、キリスト教が熱狂的に盛んになりました。しかし、「神よ、食べ物を与え給え。どうか死なずにすむように」と祈り続け、聖書のダニエル書や黙示録の数字を適当に操作して、「いついつまでに日本は敗れ、自分たちは解放される」などの予言が流布されたりしましたが、それらはことごとく外れ、状況はむしろ悪い方へ進んで行きました。
日本軍は公然と捕虜を殺害し、しかもそれは、銃剣で突き殺す、射殺する、溺死させる、首をはねるなどの残酷な殺し方でした。
このような中で、アンガスという名の捕虜が死にました。彼は、病の友のために自分の食事と毛布を与え、餓死したのです。このような犠牲行為が、やがて次々と起こり、捕虜たちは真剣に神を求めるようになるのです。
収容所内の日曜日の野外礼拝は数千人の讃美であふれ、なんと前線で負傷した日本兵が収容所に運ばれて来ると、捕虜たちは自分たちを苦しめている日本人なのに、水を与え、傷口を洗い、手当し、わずかな自分たちの食糧までも提供したのです。
キリストの愛が、彼らの憎しみに勝利し、敵をも愛する愛を与えたのです。彼らは、キリストこそ真の平和を与えるお方であることを知るのです。
本書は、今も真実に生きて働く神の現実の確かさを力強く証言する、一読の価値がある良書です。絶版となっていて、入手するのは困難かもしれませんが、古書店などでもし見つけることができたら、購入をおすすめします。
聖書のことば あなたがたの敵を愛しなさい。あなたがたを憎む者たちに善を行いなさい。(新約聖書・ルカの福音書6章27節)
